日本郵便において、運転手への点呼業務不備が広範囲にわたって発生していた問題は、同社に対し、貨物自動車運送事業法に基づく最も重い行政処分が下される事態に発展しました。
この処分により、主要な拠点間輸送などに使用される約2,500台のトラックの運送事業許可が取り消され、5年間は再取得不可という異例の重罰が科されます。日本の物流インフラの根幹を揺るがす問題として、大きな社会的衝撃を与えています。

問題の概要と事実
- 広範囲な不備:全国3,188局のうち、約75%にあたる2,391局で点呼業務の不備が確認。実施していない点呼を記録した「改ざん」は10万件超にのぼる。
- 行政処分の異例さ:国土交通省は6月18日に正式決定予定。大手事業者としては極めて重い対応。
- 飲酒運転の発覚:2025年4月だけで全国10支社において20件の酒気帯び運転が判明。点呼不備の実害が明るみに。
- 内部通報の軽視:2022年以降の内部通報にもかかわらず、組織は事実を否認。2025年3月以降、ようやく実態を認めた。
問題の背景と分析
この問題の背景には、以下のような構造的課題があります。
- 独占的公共性の残存:長年、民営化後も「公共サービス」としての慣習が残り、監査・競争のプレッシャーが不足。
- 現場の慣習:「管理者がいないときは点呼をしない」「みんなやっていないからいい」という空気が蔓延。
- 経営陣のガバナンス欠如:千田社長も「構造的な問題」であることを認めています。
業界全体に見える構造的問題
- 深刻なドライバー不足:1995年の約98万人から2030年には52万人まで減少予測。
- 宅配物量の急増:EC拡大により、過去5年で約23%増加。
- 労働時間規制(2024年問題):運転手の時間外労働に制限がかかり、便数・人手ともに逼迫。
これらの要因が、「安全確認より効率」という風潮を生んでしまう土壌となっていました。
点呼の重要性とは

点呼は、単なる形式ではなく以下のような「安全輸送の要」です。
- 運転前後の健康状態・アルコールチェック
- 事故や飲酒運転の未然防止
- 社会インフラとしての企業責任の象徴的な業務
特に日本郵便は、年間約10億個の荷物を扱い、国内シェア2割の大手。
このような組織が点呼を形骸化させていたことは、極めて深刻です。
今後の展望と再発防止策
日本郵便は処分を受け入れ、以下のような対策に着手しています。
- 約4,000人のドライバーの配置転換
- 軽ワゴン車や他社への委託による輸送の確保
- 点呼のデジタル化/映像による記録保存/対面点呼の徹底
- 意識改革のための研修制度の強化
- 経営刷新:社長交代(2025年6月予定)
私たちが学ぶべきこと
この問題は「荷物が届いて当たり前」という常識の裏側にある、
現場の努力と安全管理の連鎖がいかに大切かを示しています。
- 企業は法令順守と現場実態の把握を徹底すること
- 国や消費者も物流への意識と関心を高めること
それが、より安全で持続可能な社会インフラの構築につながるはずです。
